僕が働いている職場が最近力を入れているのが、著名人による講義を社員に拝聴させることで、しゃれたサロンに毎度毎度、この国を代表する知識人を招聘しているんだけど、今回はなんとあの松岡正剛氏が来た。
2005年9月の記事一覧
僕が敬愛してやまない3大ポップカルチャー時評家のひとり、佐々木敦氏の最新批評本「ソフト&ハード」が刊行されました。みなさんご覧になられましたでしょうか?(ちなみに残りの2人は福田和也氏とスージー鈴木氏です)
1995年から2005年までの、映画〜音楽〜文学等のあらゆるカルチャークリティックスの膨大なテキストを収録したもので、この1冊でこのディケイドの文化的現象が(かなり限定的/局地的ではあるにせよ)きっちりとおさえられる内容になっています。
なかでもとりわけ感動を禁じ得なかったのが、「古谷実論」でした。
これは「僕といっしょ」→「グリーンヒル」→「ヒミズ」→「シガテラ」に至るまでの古谷実の「実に分が悪い、世界との対峙」についてを、極めてロジカルに思い入れたっぷりに論じたもので、あらためて古谷作品の奥深さに気付かされること請け合いです。
それにしてもこの本を読んであらためて、僕はまだまだ本を読む量も、音楽を聴く量も、映画を見る量も全然足りてないなぁと思いました。
金と時間が欲しいぜ。
(浴びるようにね)
菊地成孔の「東京大学のアルバート・アイラー」が非常に面白い。
東京大学の非常勤講師をつとめた彼が、一般教養の授業で話った講義録で、主にジャズ史ということになる。
ちなみに音楽の記号化手法としての「バークリー・メソッド」とジャズのモダンムーブメントの発端となった「ビバップ」を結びつけて考える、というのが彼の授業の基本スタンスであるようです。
「バークリー・メソッド」ってのは、要はコードシンボルの体系化のことで、CmとかDmaj7とかってやつのことなんだけど、こうした記号整理学とジャズの新潮流がシンクロした背景や、それが商業音楽にもたらした影響なんかをいつもの調子でベラベラ語っている、と。
僕にとっては非常に新鮮な話だったし、同時にツタヤの半額レンタルで借りてきたC.イーストウッド監督の最高傑作との説もある『BIRD』(ビバップの創始者チャーリー・パーカーの伝記映画)が、また近年稀にみる超名作だったこともあり、ここにきて合わせ技で一気にジャズに対する理解・興味が深まったという訳なのだ。
ちょっと遅いニュースだけど、豊田利晃監督が逮捕されてしまいましたね・・・。
豊田容疑者の映画「空中庭園」10月公開
覚せい剤取締法違反の現行犯で逮捕された映画監督、豊田利晃容疑者(36)の新作映画「空中庭園」の製作委員会は29日、映画を予定通り10月上旬から全国で順次公開すると発表した。同委員会では、事件後公開の是非を検討してきたが、上映を望む声が劇場などに寄せられ「観客への責任を全うしたい」と公開を決めた。
東京、大阪の劇場で上映予定だった東京テアトルは「社会的道義的責任は重い」として、公開中止を独自に決めている。
「空中庭園」は角田光代さんの小説が原作で、東京郊外を舞台にした家族の物語。小泉今日子らが出演している。
[2005/8/29/20:19]
僕はこの日本人映画監督の作品が大好きでして。
大河ドラマフリークの女の子に激プッシュされて見た「義経」の「決戦・壇ノ浦」の回ですが、凄まじかった。
僕はこれまで大河ドラマを避けて通って生きてきたタイプの人間なのですが、この1回だけでも、大河ドラマの壮大さを実感、思わず受信料払ってもいいかなとさえ思いました。
とりわけ平知盛を演ずる阿部寛の名演には震えが走りました。
「見るべきほどのものは、すべて見た」と言い放ち入水する様、俺もそんなコメントを残して死にてーよ。
これまで大河ドラマってなんて長ったらしいんだろうと思っていたのですが、今回ある種この「冗長さ」こそが大河ドラマを特徴づける重要なファクターなんだということに遅まきながら気がついた次第です。
もはや2時間を超えるコンテンツには相当の拘束力が必要で、そうなるとこの年間40時間ぐらいあるだろう大河ドラマなんて基本的にはありえないんです。
でも、歴史を語るという点で考えると、そこに重みがでてくるのではないかなぁと。つまり僕は今回初めて義経を見たので、単に演出や登場人物の演技などに魅力を感じた訳ですが、それまでの35回を見てきた視聴者にとっての今回、壇ノ浦というのは、まったく重みが違うんだろうなという、歴史の伴走者にとっては快感すらともなう一大カタルシスとして映るんだろうなぁというようなことを思いました。と、するとやはり歴史を語る上では、この「長さ」は適正なのだな、とひとり分かった気になった訳です。
ところでカジケンリサーチによると、大河ドラマは20代後半の、ちょっと世の中に憂いている、恋愛に対してまっすぐなタイプの女性が視聴している傾向が高いということが明らかになりました。犬を飼っている場合も多いようです。以上、参考までに。
もう終わってしまったけど、
森アーツセンターにて開催していたフィリップス・コレクションは本当に素晴らしかったですね!
特に目玉作品とされていたルノワール『船遊びの昼食』の素晴らしさは、文字通り筆舌に尽くし難いものでした。
この絵画が放つ空気感は、まさしく19世紀のパリの光景を鮮やかに映し出していたのではないかと思う訳です。