No Surprises

ちょっと前に鷲尾和彦さんの『 フォト・ドキュメンタリーNIPPON2006 
〜 鷲尾和彦写真展 "極東ホテル" 』のオープニングパーティにお邪魔して、
「鷲尾さんどうも〜」なんて挨拶をしたら、
「ブログ読んでるよ」って言われて、
思わずワインをむせそうになった。

鷲尾さんの写真はかっこよくてリアルで、
東京の今をきっちり映している。

篠山紀信氏が
「私には『ベストポジションからベストタイミングで』という意識が常にある」
とある雑誌で語っていたけど、
それはもちろんフレーミングやシャッターチャンスのことだけじゃなくて、
写真家ってのは宿命的に「いま、ここ、を映す意識」が高まっていくんだろうなと思った。

ちなみに鷲尾さんは自分が写した「それ」のことを
「Floating World(浮世)」って呼んでいた。


そんな鷲尾さんが
「今、僕の頭の中ではずっとこれが流れてるよ」って教えてくれたのが、
トム・ヨークの初ソロアルバムで、
それを聞いて、僕はその日のうちに目黒のHMVで買って帰った。

トム・ヨークといえば、高校生の頃に
大塚の豊島区立中央図書館で勉強しながら聞いてて、
突然涙がでてきた名盤『O.K Computer』

このアルバムでトム・ヨークが、ギターノイズやピアノの旋律の中から
ポツポツと語りかけてくることは、
16歳かそこらの僕にとって大変な衝撃だった。

それは一言でいえば、孤独と向き合うのは凄く辛いけど、
そこを超えたところにはきっと美しい世界がある、みたいな、
なんかそういうことだと思うんだけど。

とにかく人生ってものに何の疑問も抱くことなく、
鼻歌まじりで生きてきた僕にとって、そのショックは計り知れず、
当然テスト勉強は手に着かず、音楽ばっかり聞いていて
そんなこんなでひどい点数を取った。

たとえば『the Bends』を、
高校の時の作文の授業中に、
僕の前の席に座っていたシンタが持っていたことを、
僕は昨日のことのように思い出す。
音楽はなんのためらいもなく、記憶とがっちり結びついた。


僕が、いま、音楽や文章のことを好み、
それに対して少しでも誠実でありたいと思っているのは、
たぶんあの頃の体験や記憶と関係があって
そしてその根っこにあるのが、
あのよくわからないショックと、
それに伴って生まれた物事に対するスタンスの変化だったのだと、
10年の月日を経て、あらためて思った。


ちなみにトム・ヨークは、カタカナで書くと「トム・ヨーク」だけど、
スペルは「Thom Yorke」と、ちょっと一筋縄にはいかないところなんかも好きだ。



beer.jpg

|2006.07.16 D&DEPERTMENT DINING GR-D |

コメントする

※ コメントは認証されるまで公開されません。ご了承くださいませ。

公開されません

(いくつかのHTMLタグ(a, strong, ul, ol, liなど)が使えます)

このページの上部へ

プロフィール

The Great Escape by kajken

サイト内検索

最近のピクチャ

最近のコメント

Powered by Movable Type 5.14-ja