それでも『LOVE』ラブ!

『LOVE』が出た!

ビートルズのMash-UpのCDが出ると聴いたとき、
僕はてっきり以前ネットでMP3音源が出回っていた、
ビートルズの『ホワイトアルバム』とJAY-Zの『ブラックアルバム』をMash-Upした、
『グレイアルバム』が正式に発売されるのかと思った。

そしたら、なんと『LOVE』だって。
サー・ジョージ・マーティン主導だって。


そもそもこのプロジェクトはラスベガスでのビートルズ×シルク・ドゥ・ソレイユのミュージカルのための楽曲再構築が発端となっている。
いつかそのミュージカルは見てみたいな、と思いつつ。

ま、そんな能書きはどうでもいい。

とにかく『LOVE』を聴いた。

賛否両論分かれるであろうこのアルバム、
非常に評価が難しい作品なのだ。

まず、大前提として、買って損はない。
これはあらゆるレベルのビートルズ好きに自信を持ってすすめられる。
あなたがなんとなくどこかで『Let it be』を聴いたことがある人であれ、
すり切れるほどサージェントペパーズを聴いた人であれ、
『ノルウェイの森』の不可思議な歌詞に想いを巡らせた人であれ、
このアルバムは、「買い」だ。

まったくもって素晴らしい楽曲の数々。
そしてデジタル・リマスタリングによって、
ビートルズのあの名曲たちがありえないクオリティで響いてくる。

これまではなんとなくモワっとしたひとかたまりだったハーモニーやそれぞれの楽器が、
くっきりとした輪郭を持って聞こえるようになっており、
それだけでもこの作品は聴くに値する。

さらに、
楽曲の構成も見事。
ミュージカルをベースとしているだけあって、
アルバムを通して聴くだけで、
なんとなく一貫したストーリーのようなものを感じることができる。

ただし、
重度のビートルマニアや、
ビートルズのオリジナルアルバムをこよなく愛する人たちにとっては、
この作品の持つ意図は、やっぱり中途半端なものになる。

つまりビートルズの楽曲のひとつひとつを繰り返し丁寧に聴いてきたり、
オリジナルアルバムの曲順がこれしかない!と思うほど染み付いている人たちにとって、
このアルバムはあまりにBGM的なのだ。

もちろん、ビートルズがBGMとして成立するのは、自明だし、
これはとても贅沢なことなんだけど、
残念ながら僕はビートルズをBGMとして聴いたことなんて一度もない。

それぞれの楽曲がそれしかないという光を放っている様や、
工夫のひとつひとつの精巧さ、そして偶然が生んだ奇跡的な響きに、
完全にやられちゃっている脳には、
このBGM的ビートルズはあまりに「いいとこ取り」すぎる。


結局のところ、
それはビートルズというバンドの懐の深さをそのまま物語っているように
僕には思える。

つまりポップで大衆的でありながら、細部まで聞き込める。
マニアからミーハーまで、誰が聴いても否定のしようがない
このバンドの「成り立ち」そのもののようなアルバムなんだ。


繰り返すけど、僕はこのアルバムをけっして否定していない。
むしろこれからヘビーローテーションしていくことになるだろう。
車の中で、あるいは、誰かが遊びに来たときのBGMとして。

それでも、
BGMとして、ビートルズを流すことにどこか違和感を覚えてしまう
このアンビバレントな気持をどうにかしたいんです。


それでも(やはり、それでも)
このアルバムは、疑いようなく、買いです。

ちなみに僕が特に好きなのは、
Drive My Car→The Word→What you're doingのシークエンス。

まあ聴いてみてほしい。
べらぼうにかっこいいぜ。


love

[美味しかったワインと『LOVE』アルバム]

|2006.11.23 GR-D|


参考:
『グレイアルバム』・・・illegal-artのホームページからDLできます。
このサイトはなかなかヤバいよ。

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