『ドリームマッチ』雑感から、ダウンタウン論(途中)

今年は意外に『ドリームマッチ』が面白かった。

いつのまにか正月の恒例で、3回目をむかえたこの番組、
正直去年まではネタの完成度が低すぎて、あまり笑えなかったんだけど、
今年はかなり笑えるコンビが満載で見応えがあった。


大きく変わったのが、コンビを抽選ではなくて、
ボケとツッコミのフィーリングカップル制にしたこと。
これによって、コンビのバランスが、圧倒的に良くなった。

僕が面白いと思ったのは、
さまぁ〜ず大竹とロンブー亮のコンビと、
ダウンタウン松本とタカアンドトシのトシが組んだコンビ。

大竹のヤツは、完全に大竹節全開のネタだったんだけど、
マグロ芸人亮が、何も出来ないからこそ、大竹の嗜好で徹底的に突っ走れたコントだった。

僕は大竹のキャラのテイストと言語選択が本当に大好きなので、理屈抜きで面白かった。


もう一組の、
松本&トシのコンビがやったのは正統派漫才スタイルだった。

そもそも松本の漫才が懐かしくて新鮮だったし、
設定を「一回でいいからトシに『欧米か』って突っ込まれたい松本人志」としたのも、
よかった。

ここで、松本は完全に「ダウンタウンの松本がこれをやってるから面白い」、という
いわば「漫才プレイ」をやっているわけで、
それが今回のネタにはとてもうまく合っていた。

より正確に言うと、
「今ダウンタウンの松本がタカアンドトシのトシに『欧米か』って突っ込まれたい役を
プレイするという構造自体が笑える」ということだと思う。

* * * *

最近の松本は、独自の笑いを求道していたところからステージを移して、
「ダウンタウンのパブリックイメージ」を想定した上で、
テレビ上でのプレイによる笑いを創出させようとしている。

それは、一見タレントっぽくなっているということなのだが、
「タレント的な松本人志を笑う」という構造を引き受けたことを、
僕はダウンタウンが新たなフェイズに突入した、という事だと受け止めている。

このブログで2005年の9月にこんなことを書いていて
そのすぐ後10月から始まったのが『リンカーン』だった。

僕はこの『リンカーン』の司会をダウンタウンがしていることと、
今回の漫才プレイの笑いの構造は、本質的に一緒だと思う。

確実にあるのは、メディアに対するスタンスの変化だ。

そして『リンカーン』や『すべらない話』での後輩芸人との絡みを見ていると、
それはもしかしたら、
イチローがオールジャパンで気さくに後輩とコミュニケーションをとり、
メディアとの接し方を変えてきたカンジに近い心理なんじゃないかと思えてくる。


そういえばイチローは最近こんなことを言っていた。

「この前、大輔と食事したとき野球は団体競技でありながら個人競技であるという話になった。で僕が大輔になんのために野球をやっているかと聞いたら大輔は『自分のためです。』と言い切ったんだ。僕はそういう選手ほど"日本人として日本の野球を背負ってる"という感情をもっていると思うんです。自分のためにと思える選手は何かに向かっていく覚悟がある。チームのためにやるんだといって、プロでありながら自分を殺してというスタンスでプレーする選手は、僕は自分勝手な選手だと思います。だからそういう選手はそういう"日本人として日本の野球を背負ってる"という大きなものを背負うことはできない。大輔からその言葉が出てきたときは嬉しかったですね。」
プレイボール:[短期集中連載 イチローイズム07]第2回より


「イチローが一見気さくな先輩的に見える」一連のサービス的な行動の背景にあるのは、
上に引用した発言にもある通り、間違いなく強い個人主義だ。

とすると、おそらく「松本人志が一見タレント的に見える」のもフェイクで、
この一連のお笑いブームを経て、
やっぱり自分が一番面白いという確信を強めたということなんじゃないだろうか。

『働くおっさん劇場』みたいな極右的なことをやりつつも、
テレビ的な、より大きなお笑いの「何か」を背負うことにしたということなんじゃないだろうか。

その「何か」が何なのかはまだわからないんだけど。

ダウンタウンについては、色々思うことがあるので、
またどこかで書く機会をつくるつもり。

* * * *


で、すっかり話が逸れたけど、
ちなみに勝ったのは、志村けんとさまぁ〜ず三村のコンビ。

別に面白くなかったわけじゃないけど、
このコンビが志村の往年の牛乳早飲み&スイカ早食い芸で
優勝ってのは、さすがに出来レースっぽく感じてしまった。

この優勝にはまったく価値なんてないんだけどね。

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Comments [2]

No.1

見てた見てた。
大竹&亮、松本&トシが面白かったのはまったく同感。

んで、マユは志村けん&三村もけっこう好きだったけどねー。
「ここに来て、この組み合わせで、
このコント見られるとは思わなかったぜー」というある種の新鮮さと、
三村の思い切りのよさが見ものだったと思うんだけど・・・
やっぱダメだったかね、あれは。

No.2

いや、実際、シムラミムラには僕も大爆笑でした。
テンポとか間とか、完成された芸って感じでしたよね。
志村けんのスイカ一気食いはホント懐かしかったし。

ただ、なんとなく決まってたんじゃないの、優勝?
って感じがしてしまったのです。

でもあの審査員だから、別に結果にいちゃもんつけることもないんだけどね。

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