「痴漢は死ね」 ー ゴールデンスランバー

どーれ、今年になったことだし、
ネズミ級の素早さでさっそく更新しちゃいますよー。


ということで、今年最初の読書は、
日本からクリスマスプレゼントに戴いた
伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』。
ベッドの中でぬっくりと読みました。

20080107.jpg


伊坂幸太郎といえばですよ、今、日本で5本の指に入るミステリー作家。
宮部みゆき、東野圭吾、山田吾郎、稲垣吾郎、そして、小泉孝太郎と。

まーそんな人気作家なわけですが、
僕は今まで2冊ほど読んだことがことがあって、
その2冊は『グラスホッパー』と『死神の精度』なんですけど、

正直ね、そこまではまれなかったんですよ。

確かにストーリー自体は面白いんだけど、
ところどころに「あざとさ」みたいなものが見え隠れして、
極太いピアノ線で張られた伏線が今夜もよく見えるぜ、っていうか、
『世にも奇妙な物語』的な、確かに面白いんだけど、、強引っつーか、
ワンアイデアで話を進めてしまっている感じがあって、
ちょっと敬遠してたんですが。

この『ゴールデンスランバー』も、
まったくそのとおりなんです。

ストーリーは、架空の日本で首相がパレード中に暗殺され、
無実の主人公が大きな謀略に巻き込まれながら逃げるという、、、
つまり映画『JFK』×『逃亡者』です。

で、正直前半4分の一を読んだ限りでは、
「ああ、またこれかよ・・」とそのあざとさに辟易して、中断。
いったんオレンジジュースを飲みにキッチンまで行ったのですが、
このとき時刻は12:30am(カリフォルニア時間)

その後、第3章に入ってから一気に物語は加速して、
気がついたら3:20am(カリフォルニア時間)、
通読してしまいました。

伊坂でまさかの午前様ですよ。

前述のとおり、よく見える伏線もありがちな展開も違わないのですが、
それでも飛躍的に上達しているのが「ストーリーテリングの力」。

たとえば「物語の構成」が、クルマでいうところの「エンジン」にあたるとするなら、
「ストーリーテリングの力」というのは、「ドライビングテクニック」のようなもので。

巨大なエンジンを積んだクルマはもちろん早いけど、
普通のクルマがドリフト走法で華麗につっぱしるから目が離せない、
そんな感じがしました。

同じストーリーテリング力のある小説として、
宮部みゆきの『模倣犯』を思いながら読んだのですが、
『模倣犯』が正確無比なコース取りで着実に首位をキープする走りだとすれば、
この小説は、毎周回抜きつ抜かれつしながらも、いつのまにか良い位置につけていて
あれ、これひょっとするといっちゃうんじゃないの?という走りっぷりで、
順位はともかくとして最後まで楽しいレースをみせてくれた、
そんな感じの清々しさがありました。

『ゴールデンスランバー』というタイトルは、
小説内でかなり説明的に語られてるけど、言うまでもなくビートルズ最後のアルバム、
アビーロード』収録のポール・マッカートニー渾身感涙の名バラードのこと。

「ああ、このアナロジーがやりたかったのか」、という上から目線が
読み進めるうちに次第に下がって、一理ある、
ていうか、やっぱ、ポールいいっちゃねー!、、、的回帰を果たすという
小気味良い(いや、憎めない?)読後感をもたらしてくれるのです。

ビートルズの名曲をタイトルに冠するという恐れ多い行為に
この小説が見合ってるかといえば、その判断は難しいんだけど、
たとえば東京に帰ったら、村上春樹『ノルウェイの森』の隣に並べて、
このバンドのあまりに大きな変遷に思いを馳せつつ、日本文学の今後を
楽しみにするぐらいの価値はある一冊だと思う。

「痴漢は死ね」は、この小説に出てくるキーワード。
この使い方には、しびれました。


どうでも良いことですが、
今『アビーロード』でamazon.jp検索したらあびる優の写真集がヒットした。
さすがにちょっとどうかと思った。

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Comments [2]

No.1

ミステリ小説としてはあざとさが鼻について
あまり好きではなかったんだけど、
青春小説としてはちょっとほろりとしました。

最近は漫画ばかり読んでいます。

No.2

>svardokovskiiさん

青春小説としては本当によかったですよね。
「花火」のくだりで昔svardokovskiiさんが書いた文章を思い出しました。

オススメの漫画とか、教えてくださいね。

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