桐野夏生と江國香織と宮部みゆきと角田光代と吉本ばなな

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女流って高校生ぐらいの頃は敬遠してました。

なんか共感できないし、結局恋愛話ばっかだし、、、
とずいぶんうがっていたのですが、
そんなことだからいつまでたっても女の人の気持がわからないんじゃねぇか、と
はたと思い、よく読んでみました。



桐野夏生の『グロテスク』は、そのタイトルから察せられるとおり、
醜悪で暗い闇の様な「女性」性を描いた
ハードコア・リアリスティック・クライム・ノヴェル。

東電OL事件を下敷きに、その動機の部分を丁寧な筆致で描き出した巨作。
女ってこえー!な一冊。

その『グロテスク』より遡ること数年、
バラバラ殺人事件を題材にした『OUT 』にも、
すでにその予兆を感じることができる。

いかにして平凡な主婦はバラバラ殺人を犯すに至るのか。
そして物語が展開するにつれ、
主犯女性の心理は思いがけない方向に傾いていく。

この2作に通低するテーマは、実は一緒で、
女性の自傷願望的な欲求の源泉をこれでもかと掘り返している。
それは身震いするほどに恐ろしい(きっと)真実なのです。

ふー、こえーこえーってんで、無添加女流作家の江國香織。
落下する夕方』は、これ買ったの3回目だ。
この小説、なぜか4年おきぐらいに読んじゃうんだよねー。

主人公の元恋人、広告代理店勤務の健吾の不甲斐なさが、
どうも他人事とは思えない、
と、ひっそりと笑いたくなります。

それにしても、女性の失恋の心理を淡い色彩で描いたこの作品は、
僕がちょっと女流に意味を見いだした記念碑的1冊でもあります。


やっぱ江國さんいいわーと思って、続いて
泳ぐのに、安全でも適切でもありません』を読んだら、
こいつはヤバい。
とにかく全編に渡ってひたすら、
濃厚で獣のようなセックスがしたい、という話しかない。

江國作品特有の低血圧ガールたちが、ここまでのことを考えているの?
ていうか江國先生自身なの?
って意味では、桐野夏生以上に(;゜Д゜)))ガクブルです。

とはいえ、この短編集、主人公たちはまぎれもなく死に向き合ってます!
思わず江國さんには、
和製レイモンド・カーヴァーの称号を与えてもいいと思いました。

でもやっぱなんか訳も無く泣けてくるので、気を落ち着かせるためにも
日本一落ち着いた佇まいの女流、宮部みゆき女史お願いします。

理由』は10年ぶりくらいに読んだけど、
手の込んだ動機の作り方に「これぞ宮部節」と安心させられる。
カポーティの『冷血』の影響であろうルポルタージュ的文体も、
一般化された今でも、あらためて感心させられます。
占有屋という、『ナニワ金融道』的職業を世に知らしめた功績も見逃せないね。


誰か』は、友人がくれたんだけど、
大して期待せずに読み始めたら、これがなんだか新しい感じの主人公誕生の予感。
この逆タマの主人公、一見さえないんだけど、
本当の強さたるものがなんなのか分かってる。

もし本当に女性的価値観で、この強さが認められるのだとすれば、
僕も精一杯生きていけそうな気がしてくる。
希望に溢れた、無性に嬉しくなる読後感も良い。

角田光代の『あしたはうんと遠くへいこう』は、ちょっといただけない。
ひねった記号的アイテム、
たとえばMy Bloody Valentineの曲なんかの使い方が
「分かる人、ほら分かるでしょ?」的な感じで出て来るのが
腹立たしいったらありゃしない。
たしかに登場する文化的記号はセンス良いし、けっこう俺好みだけどさ、
それをこれ見よがしに提示したって、分からない人には分からないよ。

本当にやらなきゃいけないのは、
『激しい雨』を聞いたことがない読者にも
まるでディランの歌声が聞こえて来るような(『世界の終りと...』)
そういう表現なんじゃないんすか!
文化系女子こじらせると危険、てなこと再認識。

もういいよ、すべて洗い流す透明な気持を取り戻したいよ、
ってことで、中学生の時以来の再読、吉本ばなな、『TUGUMI(つぐみ)

これって改めて読むと本当にキラキラした美しい情景。
そこにはグロテスクなエゴもむせ返るようなセックスもなく、
瑞々しい心をもった美少女の永遠の青春があって、
僕自身の汚らしい垢も若干おちたんじゃないかな。
あらためて、天才ばななの美しい感性と日本語力に脱帽でした。
『ジョゼと虎と魚たち』って絶対これの影響受けてるよね。

散々女流を読み散らかして気づいたのは、
実は『グロテスク』にも『落下する夕方』にも『TUGUMI』にも、
女性から見ても唖然とするような絶世の美女が登場するという事実。

美しさという厄介すぎる問題に、対峙せざるを得ない女性たちの
運命に、ちょっと切ない気持になりました。

にしても、昔より女流に対するアレルギーは減ったようで
そこに自身の成長を見た気がします。

それにしても、TUGUMIいいよTUGUMI。
ハルヒ級のツンデレ少女ぶりに萌えまくりだよ、って
どうしようもない感想で、ホントにすみません。

では、気を取り直して一曲聴いてください。
全ての女性に捧げます。
ナンバーガールで、『透明少女』!


NUMBER GIRL - 透明少女 PV

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