強く生きる人

週末に祖父母がやってきた。

87歳の祖父は、
昨年、僕がこちらに着いてすぐに癌が見つかり、
数ヶ月間に渡り、放射線治療をしていた。

祖母は祖父に比べればはるかに元気だが、
骨折と高齢によりかなり足下があやうい。

ロスの空港で、
職員の手によって押された車椅子姿の2人を見た時、
僕は嬉しさよりも、心細いような、血がすうっと冷めるような感覚をおぼえた。


連れて来たのは父である。

祖父母の我が侭----やはり「我が侭」だったのだろう
周囲の親戚にはずいぶん海外に出ることを反対されたらしい----
に付き合うカタチで、会社を休んでやってきた。

僕は海外で祖父母を迎えるのも初めての経験だし、
そもそも最後に祖父母と旅行をしたのは何時の事だったか?
しばらく考えても思い出せない程、遠い記憶の頃の話なので、
いったいどんなプランで2人をもてなせばいいのか、正直分からなかった。

分からなかったが、
とにかく徹底的にアメリカを体験させるしかない、と、
ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドのスタジオツアー、ワイナリー巡り、
メキシコ散策、サンセットビーチ、(僕の)学校見学、ステーキレストラン、メジャーリーグ、、、
ありとあらゆるオプションを揃えておいて、
祖父母の健康状態に応じて、臨機応変に組んでいこうという心づもりで居た。

しかし驚くべき事に、
たった4泊しかない御一行様は、上記すべてをこなしてしまった。
全てを終えた彼らは、むしろ来た時よりも元気になっているようにすら見えた。

80過ぎた老人のどこにそんなエネルギーがあるのか、見当もつかなかったが、
とにかくここに一緒に居る事が嬉しくてしかたないのだというその事は、痛い程よく分かった。


祖父は「毎朝、お経をあげる際、
かならずアメリカでの無事を祈っている」と言った。

僕が事故にも遭わず、こうしてのんきに過ごせているのは、
そんな見えない大きな力に護られているからなんだろうと思った。


* * * * *

みんなで見たパドレスVSマリナーズの試合では、
イチローが今年初の5打席5連続ヒットを飛ばした。

隣に座っていたパドレスファンは、信じられないと言う顔をして僕を見た。

僕は奇跡はここに起きるんだと思った。

祖父は嬉しそうに笑っていた。


20080701.jpg

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Comments [2]

No.1

おじいちゃんとおばあちゃん、kajkenのところに遊びに行けて
本当に良かったね。

・・・コメントは以上に尽きる。ホントに。

マユは仕事柄、
このような出来事に、いろいろ分析や評論を加えたくなるところだけど、
それも野暮な気がするぐらい、素敵で奇跡的な「事件」です。

No.2

>マユさん

コメントありがとうございます。

今更「おじいちゃんにこんな一面があったんだ」てなこともあったりで、
考えさせられました。

ま、とにかく本当に良かったに尽きます。

介護最前線に直面しているマユさんの分析/評論も、
機会を見つけて、ぜひきかせてください!

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