復刊ドットコム、というサイトをご存知でしょうか?
既に廃刊になっている本について、
インターネット上で、署名(のようなもの)を集め、
一定数に達したところで出版社に復刊を依頼する、という
ネットの分散協調性をうまくつかんだ、わりと志高いサイトです。
まだロングテールなんて言葉がなかった2001年頃から、
既にあったように思います。
さて、なぜそんなことを覚えているかと言うと、
僕はこのサイトである本の復刊に署名したからです。
それは、かつて筑摩書房から出ていた「チェーホフ全集(文庫版)」です。
大学3年生の夏、福田和也先生のゼミで、
「ともしび」を読んで、完全にこのロシア人作家のトリコになって以来、
図書館で借りて読んだりするうちに、どうしても全集が欲しくなりました。
残念なことに、当時の日本ではだれもチェーホフ全集なんてほしがっておらず、
筑摩書房の文庫版は完全に絶版となっていました。
古本で手に入れようにも、神保町の田村書店で、
たしか4万ぐらいの値段が付いてて、ちくしょうと思ったものです。
そんな折、このサイトの存在を知り、駄目もとで署名したのが、
2002年11月3日のことでした。
しかし、
その後全集が復刊したというニュースもなく、
やっぱダメか・・・ていうか、このサイトの存在さえ忘れかけていた09年の夏に
突然、以下の様なメールが来たのです。
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復刊ドットコムです。いつもご利用ありがとうございます。
『チェーホフ全集(文庫判)』『作家の日記』のリクエストにご投票
いただきました皆さまにお知らせです。
■『チェーホフ全集(文庫判)』復刊リクエスト投票ページ
http://www.fukkan.com/fk/VoteDetail?no=6552&tr=b
■『作家の日記』復刊リクエスト投票ページ
http://www.fukkan.com/fk/VoteDetail?no=16334&tr=b
復刊活動状況をお知らせします。
詳細は、下記URLより復刊活動レポートをご覧下さい。
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いつもご利用じゃねーし、してねーし、と突っ込みつつリンク先を見てやると、
急に署名が急増した為、出版社との交渉に漕ぎ着けた、というようなことが書かれていました。
推察するに事態は表題のとおり進行した様です。
つまり村上春樹の『1Q84』でチェーホフの『サハリン島』についての記述があったことを受けて、
急激に復刊リクエストが伸びた、というカラクリのようなのです。
この7年間まったく進展のなかったこの問題が急速に動き始めたのです。
まあ、正直な話、今までの7年間はなんだったのよ的な、
ちょっと複雑な気持ちはなくもないんだけど、
ここはひとつ名作の復刊に(結果として)強烈な後押しをしてくれた、
村上春樹の功績に、素直に感謝することにします。
※追記
しかし、実際、復刊したのは12巻、『チェーホフ全集〈12〉シベリアの旅 サハリン島 (ちくま文庫)』のみ。
出版社のサイトでも村上春樹からの影響を否定しない(むしろ便乗してやろう)気な空気。
おーい、筑摩書房さんよ、どうせなら全巻まとめてやっておくれ。
かならず全部買うからさ。
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