時折、「ちょっと、やだ...誰かアタシのこと尾行してる?」って
夜道を振り返るようなタイミングで読みたくなるのが女流作家で、
普段まったく読まないくせに読むと、「おお、この感じ」と思って
毎度それなりに得るものがあります。
最近読んでいるのは、絲山秋子です。
それがこの作家を知る最初の作品として良かったのかどうか分からないけど、
最初に読んだのは処女エッセイ『絲的メイソウ (講談社文庫)』。
これはかなり良いです。
この一冊でこの人が信用に足る人物だということが一発で分かる感じ。
例えば酒井順子のエッセイを読むと、どの本もたいてい面白いんだけど、
「負け犬とか良いつつ、結局自分のこと好きだよなー」って感じがする。
ちょっとだけ、いやかなりセーフティな側から、
センスよく呈示される「ほんとう」が、
若干鼻につく感じってありませんか?
顔もまあブスじゃないし。
そこいくと絲山さんは元INAXの営業である。
でもって見た目もちょっとダサい。
だけど、その一回諦めたタイミングが数段早い感じが、
彼女の人間的な深みと信頼感を作り出している。
そのクールさには好感がもてます。
そして小説やエッセイに登場する音楽のセンス。
特に『ラジ&ピース』で、特にこれといった取り柄もなさそうな
30代ラジオパーソナリティの主人公が地方局で「キラ☆キラ」的な番組をやりつつ、
選ぶ音楽、その激渋ロックぶりのかっこよさ。
同じ女流の角田光代が元カレに教わった感を消化できていないのに比べ
数段深いと感じました。
僕の中で女流を読む基準が今ひとつ定まらないので、
かなり感覚的な好き/嫌いになってしまうけど、
今のモードには絲山さんが合っている気がします。
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