青盤

●「ワンアウト」

たとえば目の前にあるBOB DYLAN LIVE 1975"THE Rolling Thunder Revue"の歌詞カードを見てみる。


"Tangled up in blue"(ブルーにこんがらがって)


She was married when we first met (初めて会ったときに彼女は結婚していた)
Soon to be divorced (が、しかしすぐに離婚した)
I helped her out of a jam, I guess (おれは彼女がごたごたから抜け出せるように手伝った)
But I used a little too much force (けど、少し力を使いすぎた)
We drove that car as far as we could (俺たちは車をできるだけ遠くまで走らせ、)
Abandoned it out West (西に捨てた)
Split up on a dark sad night (暗くて悲しいよるに別れた)
Both agreeing it was best. (二人ともそれが一番だと)
She turned around to look at me (彼女は振りかえって俺を見る)
As I was walkin' away (歩き去ろうとしてるときに)
I heard her say over my shoulder (肩越しに彼女が言うのが聞こえた)
"We'll meet again someday on the avenue" (「いつかまたあの道で会いましょう」)
Tangled up in blue.  (ブルーにこんがらがって。)


非の打ち所がない、素晴らしい詩。明日からこのブログの名前を「ブルーにこんがらがって」にしようかな、つってな。
だがしかし、僕はこの曲を聞いても歌詞の意味を即座に理解することはできない。僕は日本人。そしてボブはアメリカ人だから。
こんな風に素敵な詩を聞き取れたらなといつも思う。新しく買ってきたCDを、歌詞カードを眺めながら聞くのはとても楽しい。

ボブ・ディラン、デーモン・ゴッホ、スチュアート・マードック。美しい詩を歌にのせる人たちは世界中にいる。


●●「ツーアウト」

邦楽、というか「日本語の歌」の優れている点は、意味が即座に理解できる点だ。
僕はそれこそが「洋楽に勝っている点である」と捉えることすらできると思ってる。裏を返せば、邦楽を聞くときの基準として、「歌詞」にとても重きを置いているということだ。

そして僕の短い音楽人生の中で、際立って「歌詞そのもの」に特別な思い入れを持っているアルバムが2枚ある。
1枚は小沢健二の「犬キャラ」で、もう1つがスーパーカーのファーストアルバムだ。

フェンダーギターのメタリックなリフにのせて歌われる『cream soda』の歌詞は、僕の大学時代の想い出とあまりに密接に「こんがらがって」いるせいもあり、今聞いても湘南の空にひこうき雲がシュッと伸びていくのが見えるような「青」い感傷を呼び込む。

スーパーカーは僕がこれまでに最も沢山ライブを見たバンドだけど、2002年のロックインジャパンフェスティバルを最後にすっかり遠ざかってしまった。
彼らは音楽性をシフトしていく過程の中で、歌詞を「音」や「響き」として使うようになった。
楽曲はメロディからリズムへ、そして歌詞の意味は抽象度を増す。

それ以降のスーパーカーも音楽としては悪くない。
けれど残念ながら「歌詞そのもの」に感動するような音楽をつくることは、彼らはもう辞めてしまったようだ。つまり僕が「彼らだからこそ」と思っていた部分は損なわれてしまった。

そして、解散。

学生時代が2度と戻ってこないように、
スーパーカーが「青い」歌を聞かせてくれる機会は、もう2度となくなってしまう。

●●●「スリーアウトチェンジ!」

しかしスリーアウトでチェンジが宣言されるということは、ゲームセットではない。
もう一度攻撃のチャンスが与えられるってことだ。
だから僕はきっとこれからも塁に出るために、得点をとるために、そしていつか逆転するために、「日本語の歌」を聞き続けるだろう。


憧れだけじゃ本当は何も見えないなって思うから、
あきらめだけは夢から覚めても言わないよって、それだけさ。
"cream soda/supercar"

Track Back

Track Back URL

コメントする

※ コメントは認証されるまで公開されません。ご了承くださいませ。

公開されません

(いくつかのHTMLタグ(a, strong, ul, ol, liなど)が使えます)

このページの上部へ

プロフィール

The Great Escape by kajken

サイト内検索

最近のピクチャ

最近のコメント

Powered by Movable Type 5.14-ja