映画 「ソーシャル・ネットワーク」に何を見るか?

先日、香港行きのNH911便でちょうど話題の映画「ソーシャル・ネットワーク」を
観ることができたので感想を書いてみる。

ものすごく感動したとか、特に大好きな映画、というわけではないけど、
心に引っかかるものがあったから。

と、いうのも、僕がこの映画を観たあと、余韻に浸りながら
機内にあった「GOETHE(ゲーテ)」という雑誌をペラペラめくっていたら、
ちょっと看過できない、この映画についての解説が載っていたからだ。


映画のストーリーやFACEBOOKの歴史に触れつつの、
「どこまでも身勝手で独善的な主人公のザッカバーグにおよそ共感する読者はいないだろう」という一文。

うーん、そうかなあ?
少なくとも僕には共感できる部分もあったんだけど。

ということで、いくつか考えられる仮説がある。
1残念ながら僕は「GOETHE」が対象としている様なスマートでエリートなビジネス・エグゼクティブじゃなかった。
2この映画は共感した/しないで楽しむべきではなく、史上最年少億万長者の成り上がり物語として楽しむべき。
3「GOETHE」誌に寄稿している映画ライターのセンスがない。そもそもなにがゲーテだ、リア充か!

いずれにせよ、ちょっとキーボードを叩いて頭を整理してみる。

まずこの映画のストーリー。
言わずと知れたFACEBOOK創業者の成功までの道のりを描いた、実話に基づいた物語である。

主人公は天才的なプログラマーで、ハーバード大学在学中に、ふとしたきっかけから、
リアルコミュニティをSNSに実名で落とし込むシステムを創り上げる。
このクールなサイトは、東海岸の大学を中心に瞬く間に広まっていく。

それにしたがって、そのアイデアや共同開発についてのいざこざが訴訟問題に発展する。
このサイトが巨大化するスピード感と、そこに渦巻く人間模様、その遠心力の強まりを同時に描き、
天才であるが故の主人公の孤独をあぶり出していき、しずかに終わる。

そんな感じの話です。

僕がこの映画を見る上で一番のポイントだと思ったのは、
FACEBOOKをつくるきっかけが、付き合っていた彼女にフラれたところから始まっている点。

これが実に映画開始5分ぐらいなんだよね。
でも実はここが一番の見せ場。

その後サイトがどんどん大きくなって、ユーザビリティを高めたり、
資金を調達したり、仲間を裏切ったりのシーンでは、主人公はどこまでいってもクールに描かれる。

主人公ザックの心が一番大きく揺れるのは、この映画冒頭の5分のところなんです。
あとはずっと死体の心電図みたいに一直線。
キープ・オン・クール。

そしてもう一度だけ、映画内でザックの心が大きく反応するのが、
FACEBOOKを立ち上げた直後に、冒頭フラれた彼女と酒場で再び出会うシーン。

ここでせっかく再会するも邪険にされたザック、
フラれた直後に彼女の悪口を実名でブログに書くという最低の行為をやっているんだから当然なんだけど。

大人しく引き下がればいいのに、言っちゃうんだよねこの一言を。
「ねえFACEBOOKって知ってる?(あれ俺がつくったんだ)」

このシーンになんてったってグッときた。

そう、そうなんだよ。

ここで言わない方がいいことをいっちゃう感じ。

いま自分がどうしてるかなんてわざわざ元カノに言わない方がいいのに、
でもつい言いたくなってしまうこの感じ。

ザックはフラれた彼女に自分を認めさせたくて、
遠回りして遠回りしていつの間にかFACEBOOKというオバケサイトを構築していた。

なんて熱効率の悪いやり方だろう。
たぶんゲーテ読者なら、そんな風にして女の子と接したりはしない。
ボート部の連中もそんな回りくどい真似はしない。

でも時として、そんなやり方でしか伝えることのできない相手がいる。

そしてそういう風にして放ったメッセージは全然届かない。
これがもう笑っちゃうほど届かない。プロトコルが違うのだ。

同じような言語で話しているのに、プロトコルが完全に違っちゃっている。
ますます齟齬は深まる。

だから仲間同士が盛り上がっていても、にぎやかなパーティが続いても、
どんどん寂しい気持ちになっていく。

監督のD・フィンチャーはパーティ、クラブで盛り上がっているシーンを撮らせたら流石に巧かった。

そう、パーティが華やかに描けているからこそ、
パーティを楽しめない人間にとっての孤独感がきっちり再現されている。

この映画からにじみ出ているザックの悲しみ。

僕はこの主人公を非人間的とは思えないし、億万長者だから羨ましいとも思えない。
ただ、同じ男性として、そのあまりの不器用さに親しみをおぼえるだけです。


How does it feel to be of the beautiful people  優雅な人々の一員になってどんな気分?
How often have you been there       あそこへはよく行くのかい?
Often enough to know          よく分かるぐらい頻繁に
What did you see when you were there    その世界でいったい何を見たんだい
Nothing that doesn't show         そんなそぶりはまるで見せないけど

Baby you're a rich man ベイビー、きみは金持ち
Baby you're a rich man ベイビー、きみはリッチだぜ

そして機内で「GOETHE」を読むような男にだけは決してなるまいと誓った。



"Baby you're A Rich Man" Lennon/McCartney

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