小沢健二 ひふみよツアー in 渋谷NHKホール

6/9に小沢健二のライブに行ってきた。

まさか彼のライブを見れる日が来ると思っていなかったので、
当日までなんだかふわふわした気持だった。

公園通りを歩いてNHKホールに入ってからも、浮き足立っていた。

物販の列に並んでいる、若いのか、
あるいは時が止まったままなのか分からない女の子たちを横目に
コンサートホールの椅子に座った。

会場には控えめな音で、意味ありげなBGMが流れていた。

一階席、前から3列目のど真ん中。
こんなに良い席でライブを見るのも生まれてはじめてだった。



暗転して、暗闇の中、『流れ星ビバップ』のイントロが流れた時、
あまりにパーフェクトな演奏と歌に、思わず、
本当にそこに本人が居るのだろうか、と疑ってしまった。

彼は確かにそこにいた。

ワンコーラス歌い終えたあと、懐中電灯のような小さな明かりに照らし出された彼は、
少なくとも僕の目には、まったく変わっていないように見えた。

まるで亡霊のようで、NYCゴースト&フラワーズだなと思った。

その亡霊の彼は、NYで遭遇した大停電の話をした。
暗闇で聞く音楽の響きに心を打たれたという話だった。
普段気にも留めない「ありふれたもの」が、ほんのちょっとしたことで、
「まったくの別もの」に変わるということがある、そんな話だった。

そして再び暗転し、「流れ星ビバップ」の続きが歌われ、大きな拍手。
次に「僕らが旅にでる理由」が奏でられた。

はじめのヴァースをそのまま暗闇の中で歌い、最初のサビにさしかかったその刹那、
ステージを照らす全ての明かりがバチッと点灯し、眩しい光の中で、
小沢健二がその姿を現した。

今度は亡霊じゃない、生身の人間になっていた。

見事な演出だった。


すげー、本当にこの人帰ってきたんだ

そこで、僕はようやく地に足がついたような感覚になる。
この奇跡のようなライブを心から楽しもうという気分になった。


彼が「LIFE」期に歌っていたのは、
「楽しい時間や大切に想っていた人や気持は、いつか消えてしまう」ということ。
それでも楽しいフリをし続けなきゃいけないんだってこと。

このあたりについては以前書いています


今回のライブで、彼は、その「楽しかった時間」そのものが、
まさにあの90年代、「オザケン」が在った時代であり、
彼方に消え去ってしまったその時代に、2010年から思いを馳せるという構造を
自身の歌詞によって想起/反復させるという、時限爆弾的な離れ業をやってのけた。

たとえば「ラブリー」の歌詞である「Can't you see the way it's a」 を「完璧な絵に似た」と書き換えた意味は、
やはり「美しかった過去」を表しているということだろう。
つまり「こんなステキなデイズ」が、「目の前に」あった90年代から、
「完全な絵に似た」過去になったことを、小沢健二は僕らに教え、そして歌わせたのである。


「ローラースケートパーク」から「東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディブロー」の流れと、
「天気読み」〜「戦場のボーイズライフ」〜「強い気持ち強い愛」の流れがとてもよかった。
「ローラースケートパーク」と「天気読み」はLIFE期の曲に合わせて編曲していて、
それが違和感なくはまっていて見事だった。

「天使たちのシーン」はメロディを変える事で新しさを出しつつも、
13分以上という長尺を楽曲の強さと力強い歌唱で聴かせていて、これまた見事だった。

僕が開演中ずっと頭の中で思い描いていた、
「これはかならず歌うだろう」的な、重要な曲は全て演奏された。

逆に、そうではない曲(無駄な曲?)は1曲たりともなかった。

徹頭徹尾、趣向がこらされ、
どこまでも自信過剰で、どこまでもシャイ。

ここまで期待値を期待以上に上回るライブをしてくれた事が純粋に嬉しかった。

きっとオザケンが社会活動家になってしまったとか、額が広がってショックとか、
いい歳してなにやってんだこの人という輩もいるだろう。

そう思う人がいても不思議はないな、と思う。
仮に今回のライブDVDが出て、メディアで取り上げられたとしても、
バッシングされたりするかもしれないな、とすら思う。

なにより、僕は彼の音楽を好きすぎるし、
あまりにも彼の居た時代を生きてしまった。


けれどきっと会場には同じ様に感じた人もいたはずで、
そういう人たちと話がしたいと思いました。

もうこんなライブは2度と体験できないだろうな。
いや、すべての「こんなステキなデイズ」はもう2度と来ないのだけど。

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Comment [1]

No.1

やっと京都に行ってきました。
もうねぇ、なんでしょう。
じっくり語り合いたい気分です(笑)。

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