内田樹 街場の文体論に想う学生時代のこと

内田樹先生の本というのを初めて買ってみた。






街場の文体論


神戸女学院大学のクリエイティブ・ライティングという科目の講義録であるところの
この本は、まず「説明する力」に傑出した作家として、3人の名を挙げるところから始まる。

橋本治、三島由紀夫、そしてもう1人はもちろん、村上春樹だ。

生徒たちに初回の講義時に宿題とした文章を取り上げての
「面白い文体/つまらない文体」についての考察を経て、
フィッツジェラルド--チャンドラー--ハルキを結ぶ線、つまり村上春樹が担った
「世界文学に連なる鉱脈」について、きっちりとした説明をつける。

そこから一気に、
ソシュール、バルドー、そしてジャック・ラカン研究の話に雪崩れ込むのだか、
これがまあ実に面白い。


そして面白いと同時に、まさにこの本自体、「説明する力」がすさまじく高く
大変分かりやすいのである。

特に心をうたれたのは、
「よいテクストとはリーダブルでなければならないが、前代未聞のことをかたるべき」
であるとする箇所。

何を言っているのか、わかってもらわないと困るが、何を言っているのか、すらすらわかられても困る。この二重の要請に引き裂かれてあることが宣言の宿命なのです。そのような分裂のうちにあり、その分裂を強く意識して書かれているテクストは美しい。痙攣的に美しい。  P.151 街場の文体論/内田樹

まさに、自分が生み出す文章がそうあればいいなと想い描きながら、
テクニカル・ライティングの授業や福田和也先生のゼミ課題にむけて、
一生懸命キーを叩いていた頃の記憶がよみがえり、背筋が伸びる想いがした。

文章を書くということが、
自分にとってとても大事なことだったという点に気づかせてくれたこの本を
2012年の年の瀬に読めたことを幸運に思う。

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