『カナリア』 塩田明彦監督
ずっと気になっていた映画。
実は『Invitation』2005年3月号で蓮實重彦氏の評論を読んだ時から
見たいと思っていたのです。
少年が走る映画といえば、
『ニュー・シネマ・パラダイス』や『運動靴と赤い金魚』。
これらの映画には、いずれも心地よい疾走感がある。
少年達の疲労感よりも先にくるのは、前進する意志や、
その先にある目標(それは妹だったり好きな女の子)だったりするのだが、
この映画の主人公の疾走はとにかくやみくもだ。
走っている少年のモーションが切ない。
その手の振り方や足の運びには迷いがないのだけど、
進むべき道のりや明日の方向がまったく見えていないということを
僕たちはどうしたって感じてしまうからだ。
そして蓮實氏も指摘しているように、
少年の隣に「贅沢に」配された、少女の表情や仕草にも
同じ影が見てとれる。
そんな少年と少女のやるせない徒労感が美しい。
ただエンディングのZAZENBOYSの曲は素晴らしいにも関わらず、
この映画のラストとしてはやはりふさわしくない。
それが、ちょっと残念です。
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