村上春樹の短編を書くテクニックに関しては、もはやレイモンド・カーヴァーやジュンパ・ラヒリと同クラスなのではないかと思う。特に面白かったのは「蜂蜜パイ(神の子供たちはみな踊る)」の続編と思われる「日々移動する腎臓のかたちをした石」。登場人物の心象の描写は見事。それと中年の女性の描き方が巧くなっているのは、作者自身の中年度合いが増しているからなのだろうか。中年になるのは仕方ないけど、中年度合いが増しているのは、ショックといえばショック。あと小説のなかで「胡乱(うろん)」という言葉が出てきて嬉しかった。(もちろん「うろんな客」をおもわず思い出してしまったため)
リリー・フランキーの「東京タワー」を読んだ某同僚が、「これは漱石を超えたね」と発言していたので、そういえば「こころ」ってどんなだっけと思い、あらためて読んだ。昔読んだ時ほど、暗い印象はなかった。この本のポイントは、印象深い第3章で終わるが故に忘れがちな事実、つまり僕が父ではなく先生の死を優先し、その真偽を確かめるべく電車に飛び乗ったということだと思う。この本を読むと人気のない海で沖に向かって泳ぎたくなる。
グロテスクな描写さえ苦手じゃなければ、できるだけ若いうちに読んだ方がいい。ラストシーンがあまりに感動的すぎて、読後にぼーっとしていたら風呂でのぼせた。
この切り口の豊富さと世界観構築力には脱帽です。どこかの会社のクリエイターはこれ買って読んで勉強した方がいいんじゃないかな。現在イブニングで連載中の「もやしもん」も微生物萌えで面白し。
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