なぜ僕たちはソフィアコッポラのビジュアルイメージに惹き付けられるのか

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(『ヴァージンスーサイズ』 1999年)


『ヴァージンスーサイズ』から、
『ロスト・イン・トランスレーション』を経て、
『マリー・アントワネット』に至る、
ソフィア・コッポラのビジュアルイメージに
僕はいつまでも惹きつけられる。


これは何かの予兆や、
そして何かを代替する記号を示しているような、
行間には根本的な問いが含まれているような
そんな気がする。


何となく、仮説をたててみた。



仮説.1
『ソフィア・コッポラの映画は、岡崎京子のマンガの代替である』

岡崎京子が最後の作品『ヘルタースケルター』を書いて、
交通事故にあったのが、1996年だ。

ある『女の子』の物語しか書かなかった彼女のマンガと、
『女の子』的なるものについて、常に同じ角度から、
アプローチしつづけるソフィアのビジュアルイメージ。

この2つの相似は容易に想起できるし、
あくまでも主観だが、
両者のファンは重複が大きいのではないかという気がする。

でも岡崎京子の不在は1996年に起こった。
時期が微妙にずれているのだ。

つまりこれは「ある予感」の第一段階にすぎない。


仮説.2
『ソフィア・コッポラの映画は、雑誌「オリーブ」の代替である』

80年代に創刊されてから、
この国に存在する、ある『女の子』的なる価値観を
ここまで啓蒙し、導いてきたこの雑誌が、
最初に休刊したのが、2000年のことだ。
(最終的な廃刊は2003年)


『ヴァージンスーサイズ』の公開が1999年。
そして『ロスト・イン・トランスレーション』の公開が2003年。

まさしく符号する。

ここからは僕は女の子じゃないので、
当時のことを振り返って想像するしかないんだけど、
『オリーブ』的な女の子としてのあり方が、そろそろ限界に達したのが、
ちょうど1999年ぐらいのことだったんじゃないだろうか。

そもそも『オリーブ的な女子』はマスではない。

どちらかというと、クラスではなんとなくグループに溶け込めないタイプの女の子が、
学校の帰りに近所の本屋で買って、家に帰ってからひとりでその世界にひたる、
という楽しみ方をされてきた雑誌だったと思う。

そこには音楽やファッションから映画にいたる文化的で、
ある種現実逃避的に、甘い世界があった。

そういうものとは裏腹に、
もっと街の空気は冷えてきていて、
いつのまにか女の子を取り巻くものや風景が、
暖かみがあってラブリーなるものから、スーパークールで憂いを帯びたものへ、
変わっていった。

たぶん初期のMilk Fed.とか、あるいはXgirlとかも、
それに一役買っていると思うんだけど。

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(『ロスト・イン・トランスレーション』 2003年)

都市の空気が速やかに冷めていく中で、
「ガーリィ」の定義を「オリーブ的な暖かみ」から強奪し、
再構築したのが、ソフィア・コッポラつくり出した世界観だった。

そう考えると、
この国の女の子の「一定数ある潜在的価値観」を
一手に引き受けたのが、
つまりは、一人の外人女性による、
『ヴァージン〜』であり、『ロスト〜』であり、
『マリー〜』なんじゃないかと、というのが、ひとつの結論である。


一方、自分のことを考えてみると、
いまだにソフィア・コッポラのビジュアルイメージに駆り立てられる僕は
『ヴァージン・スーサイズ』、ないしはその頃の空気から、
結局のところ、まだどこへも行けてないんじゃないかってことだ。

結局のところ、サッカー部のマネージャータイプよりも、
音楽を聞きながら一人で下校しちゃうタイプの方が好きだからね。

まあ、
それについて、弱ったなぁってこともなければ、
開き直るつもりもないのだが。


いずれにせよ、
『マリー・アントワネット』を見たらきっと、
スクリーンのむこうに照射された、古い夢のような記憶に、
手を伸ばしても届かない感触が、またやるせなく切ない気持にさせることだろう。

mary.jpg

(『マリー・アントワネット』 2007年)

余談:

ところでお兄ちゃんのローマン・コッポラは、
いったい何をやっているのでしょうね。

彼の唯一の監督作品である『CQ』が、僕は本当に大好きなのですが。

ストロークスのPVを撮ったりしているのはいいけど、
そろそろ映画も撮ってほしいものです。


『12:51』 The Strokes/Dir. Roman Coppola

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