本 一覧

respect / en-taxi

僕はen-taxiを創刊以来欠かさず買っている者として
読者のみんなにはよく知られていると思うが、
実はそのen-taxi、前号で大幅リニューアルをしたのですよ。

その結果、500Yenというワンコインプライスから、
880Yenといういきなりの暴挙、超高額にはね上がり、
おいおいざっけんなよと思ったりもした。

だが、今号(2006 AUTUMN号)はそんな僕の怒りを
雲散霧消するに等しい内容だった。

巻頭の井上陽水×リリーさんの対談に始まり、
大竹伸朗大特集(feat. みうらじゅん)
談志・しりあがり寿他の笑い論
小野瀬族生(CKB)の”懐食”エッセイ
中山康樹のビーチボーイズ・ストーリー
浅田彰の『カポーティ評』
GREAT3片寄のコラム
etc...

特に大竹伸朗を
僕は過去にこの雑誌で初めて知り、
今さら著作を何冊か読んでいたのだが
彼の全景展にかける想い、ひいては芸術に注ぐ情熱はすさまじい。

なんというか、
生活のすべてをアートに捧げている生き方、その想い。

そのぶちまけられたペンキみたいな感情を
感じることができる今回の大特集を読むだけでも、
この1冊を買う価値があると思う。
(オリジナル・ポストカードもついてるし)

特集の組み方といい、登場するゲストといい、
本当にいい雑誌を手を抜かずにつくっているなぁと
いつも感服してしまう。

新しいことや変わったことではけっしてないけど、
「今、ある事象をこう取り上げるぜ、俺たちは」
という切り口やスタンスを忘れない編集同人の姿勢には、
ホントに頭が下がります。

エロ教授

ロハスな生き方を提唱する教授こと坂本龍一氏が
最近特に力をいれているのが実はエロハスだということを知って
僕はびっくりでした。

やれエレファンティズムだのやれ非戦だの言っておきながら
結局は「こちら側」にきたか、という印象。


で、「エロコト」編集長だと。


「エロい女は存在そのものがエコである」
だと。

その物言いはバカだし、
これだけ見ると女性をバカにしているとしかいいようがないのだが...。


表紙にはエロをどうにかしておしゃれにしようとしてきた歴戦の戦士たちの名前が。

江口寿史
リリーフランキー
常盤響
・・・

そしてアートデザインは信藤さんっていう...。

これはもはや、
エロをおしゃれ化しておっさんたちが悪いことしようとしているとしか思えん。

内容はまだみてないのでなんともいえないけど、
そして、僕は本来、バカもエロもこの本に参画している人たちも好きだけど、
この本にはちょっとやな悪ノリを感じてしまった。

ていうか、百歩譲って参画しているみんなはいいけど、
坂本龍一がエロハスゆったらまずいだろ。
今までのロハスなんだったんだと、思うわけです。

思うに、教授は焦ったんじゃないだろうか。
「エロ教授」という代名詞をミラーマン植草教授に
奪われてしまったことに。
だとしたら、この雑誌の発刊はあまりに迅速な手の打ちかただと、
尊敬せざるをえないわけだが。

まー、それよりも先日のライブでスチャダラのBOSEが言った
「ロハスってお金がかかるんだよね(笑)」
の一言が、いろんな矛盾を射抜いた気がしてすごくよかった。

愛と笑いの夜

誕生日のエントリー以来、まったく更新もせずでね。
オマエはどんだけ自分が好きなのかと、
自己顕示欲の塊かと、
ミートローフかと、
思われた方がいてもおかしくない。


でもね、実際結構忙しかったんですよ。

ま、じゃあブログなんて書くなよってな話もあるかと
思いますが、それはいいっこなしよ。


言い訳しててもはじまらないので、
最近読んだ本を幾つか。

続きを読む

Put the book back on the shelf 2

音楽 三島由紀夫

三島由紀夫の代表作。
ではなく、むしろ亜流というかニッチ系、枝葉的な作品。

都内で精神科医(カウンセラー)を営む汐見和順の手記という
体裁で書かれたサスペンス風の作品。
汐見のもとに訪れたのは不感症の女性で、その原因をカウンセリングするうちに、
医者自身が非現実的世界の深い森に紛れ込んでしまう、、、というような内容。

解説に女性誌に連載していたってあるけど、
読者層を意識してか非常に読みやすいので、三島文学アレルギーの人にもおすすめ。

終盤の展開は、連載らしくやや冗長なきらいがある。
なんといっても始まりから中盤あたりまでの医師とミステリアスな女患者のやりとりが秀逸。

ちなみに新潮文庫の三島作品の装丁、僕は肯定派!


「これだけは、村上さんに言っておこう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶつける330の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか? 村上春樹 絵・安西水丸

村上春樹が読者からのたわいもないメール質問に答える脱力系ムック。
おなじみのコンビでお届けされるゆるめの内容に仕事上のミスとか
ぱっとしない日常とか忘れて、ほっとすること請け合いです。

村上さんの、クールな態度をとり続けながらも、
なんだかんだいって世界や人々を信じている姿勢を見るにつけ
「村上春樹でこうなんだからオレもちゃんとしなきゃなー」と、
世の中に対して前向きな気分になれます。


村上春樹の隣には三島由紀夫がいつもいる。 佐藤幹夫

三島、村上ときて、この本です。
新書なんだけど鹿児島の空港で買って、
帰りの飛行機の中でほとんど読んでしまいました。

村上春樹を三島文学の系譜として分析するアプローチは、
これまでにはありそうでなく、興味深かった。

筆者もその着眼点にはそうとう自信があったようで、
ことあるごとにそのことをやや自慢気に持ち出してくる。
いや、それ自慢されてもって感じなのだが。

が、内容としては比較的ありがちな、
初期村上作品を重箱の隅をつつくようなやり方で読み込むというもの。

目のつけどころがよかった割には、掘り下げが甘くやや消化不良。
だけど、この本を読んでまたいろいろと読み返してみたくなりました。


そして今は、スチュアートダイベックの『シカゴ育ち』を読んでますが、
これ超良い。

帯にかかれた翻訳家の柴田先生の一言
『いままで自分が訳したなかで最高の一冊』にはノックアウトされました。

うさぎ!

小沢健二の連載がひっそりとはじまりました。

季刊誌「こどもと昔話」という非常にインディーズな雑誌ですが、渋谷のパルコブックセンターでは、平積みになってました。(ちなみにこの雑誌の編集者は小澤俊夫氏、他でもないオザケンのパパです)

かつて「渋谷系のプリンス」と言われていた「LIFE」期の小沢さんですが、僕は個人的には1stの「犬キャラ」と「指さえも」以降のシングル群が好きでした。今でも時々iPodで聴いてますが。

それにしても「小沢さん」っつったら今は「あま〜い!」の方ですよね。

友達に聞いた話だと、実はこっちの小沢さん、安達祐実の大ファンで写真集まで持っていたとか・・・。

まさか相方の奥さんになっちゃうとはねぇ。

って、話がそれましたが小沢健二の「うさぎ!」。
資本主義を切り裂く物語を、「昔話的文体」で書こうとしています。

「en-taxi」誌での例の連載が終了した今、季節の変わり目を楽しみにできる連載の登場に歓びを感じています。

美のアリバイ、衝動の行方

いやー、なんか
「アートってさ」つって、現代美術の話とか、したり顔で喋りだす建築学部出身の人とかっていやよねー、とか言いつつも、結局ポップアートとか写真展とかに興味をそそられてしまう自分もどうかと思う。

本当はよくわかってないのに、ついついみんなして、知ったようなこと(見当はずれなこと)を言いたくなってしまうのだ。

そんな時はぐっと言葉を飲み込んで、まずは芸術家が書いた本を読もう。

続きを読む

Put the book back on the shelf

東京奇譚集 村上春樹

村上春樹の短編を書くテクニックに関しては、もはやレイモンド・カーヴァーやジュンパ・ラヒリと同クラスなのではないかと思う。特に面白かったのは「蜂蜜パイ(神の子供たちはみな踊る)」の続編と思われる「日々移動する腎臓のかたちをした石」。登場人物の心象の描写は見事。それと中年の女性の描き方が巧くなっているのは、作者自身の中年度合いが増しているからなのだろうか。中年になるのは仕方ないけど、中年度合いが増しているのは、ショックといえばショック。あと小説のなかで「胡乱(うろん)」という言葉が出てきて嬉しかった。(もちろん「うろんな客」をおもわず思い出してしまったため)


こころ 夏目漱石

リリー・フランキーの「東京タワー」を読んだ某同僚が、「これは漱石を超えたね」と発言していたので、そういえば「こころ」ってどんなだっけと思い、あらためて読んだ。昔読んだ時ほど、暗い印象はなかった。この本のポイントは、印象深い第3章で終わるが故に忘れがちな事実、つまり僕が父ではなく先生の死を優先し、その真偽を確かめるべく電車に飛び乗ったということだと思う。この本を読むと人気のない海で沖に向かって泳ぎたくなる。

世界は密室でできている。 舞城王太郎

グロテスクな描写さえ苦手じゃなければ、できるだけ若いうちに読んだ方がいい。ラストシーンがあまりに感動的すぎて、読後にぼーっとしていたら風呂でのぼせた。


週刊石川雅之 石川雅之

この切り口の豊富さと世界観構築力には脱帽です。どこかの会社のクリエイターはこれ買って読んで勉強した方がいいんじゃないかな。現在イブニングで連載中の「もやしもん」も微生物萌えで面白し。

僕が敬愛してやまない3大ポップカルチャー時評家のひとり、佐々木敦氏の最新批評本「ソフト&ハード」が刊行されました。みなさんご覧になられましたでしょうか?(ちなみに残りの2人は福田和也氏スージー鈴木氏です)

1995年から2005年までの、映画〜音楽〜文学等のあらゆるカルチャークリティックスの膨大なテキストを収録したもので、この1冊でこのディケイドの文化的現象が(かなり限定的/局地的ではあるにせよ)きっちりとおさえられる内容になっています。

なかでもとりわけ感動を禁じ得なかったのが、「古谷実論」でした。

これは「僕といっしょ」→「グリーンヒル」→「ヒミズ」→「シガテラ」に至るまでの古谷実の「実に分が悪い、世界との対峙」についてを、極めてロジカルに思い入れたっぷりに論じたもので、あらためて古谷作品の奥深さに気付かされること請け合いです。

それにしてもこの本を読んであらためて、僕はまだまだ本を読む量も、音楽を聴く量も、映画を見る量も全然足りてないなぁと思いました。

金と時間が欲しいぜ。
(浴びるようにね)

おとこのなかのおとこ

続きを読む

Night on the planet

「地上の夜」という曲の中で、小沢健二は、この地球における時間の概念は、星と自分との位置関係の中で説明できるということを、白昼夢的なイメージの羅列と、シンプルなギターソロの反復によって表現した。

時間と星の動き(天体の規則)の関係性、あるいはその連動性について考えると、そのあまりにも壮大な仕組みにクラクラしてしまうが、恩田陸の「夜のピクニック」はまさにこの「地上での時間の流れ」についてを、真摯に真正面から描いた小説だといえよう。

続きを読む

このページの上部へ

プロフィール

The Great Escape by kajken

サイト内検索

最近のピクチャ

  • kindle.JPG
  • guildcoffee.JPG

最近のコメント

Powered by Movable Type 5.14-ja